2013年2月17日日曜日

うつ病とマインドフルネス瞑想


現在、最新のうつ病治療として、セロトニンやノルアドレナリンの補充方策、DLPFCや海馬に対して血流を増やす方策などが実施されつつありますが、扁桃体の興奮を収めることが最善の方策だと思います。
2010年に発表されたMBSRに関する研究によると、瞑想をする人々の脳で、海馬の成長と扁桃体の縮小が認められています。
扁桃体の縮小は、熟練した瞑想者のグループから報告されるストレスレベルの低下と相関性があり、また、瞑想によってストレスレベルが下がれば下がるほど扁桃体が小さくなったことが示されました。(「リアルハピネス」p55 シャロン・サルツバーグ 2011 (株)アルファポリス)
そもそも、どういう時に扁桃体が興奮するかというと、1つは、今現在の状況が不快(危機)であると感じた時ですが、その人の認知の仕方により、不快(危機)と感ずるかどうかは決まります。
2つめは、過去の不快な状況を思い出した時ですが、その人が意識しないうちに過去の記憶が反すうされて起きてしまいます。
これに対し、マインドフルネス瞑想に熟練すると、
① 心に浮かぶ思考や感情を、価値判断をせずに、ただ思考・感情が湧いたと一歩離れて観察することができる。
②否定的な思考が繰り返す(自動操縦状態)ことを止めることができる。
③過去の記憶を浄化することができる。
などといった効果により、ストレスレベルを低下させ、扁桃体の興奮を収めることができるものと思われます。

2013年2月11日月曜日

マインドフルネス瞑想と集中力


 テーラワーダ仏教の伝統的な瞑想方法ではヴィパッサナーは禅定に達した後で実践していたのに対し、マハーシ方式では気づきと注意集中力を一緒に育てていきます。
 では、マハーシ方式ではどの程度の注意集中力が求められるかという点について、ウ・コーサッラ西澤師が訳された、「Vipassanaa Q&A  マハーシサヤドーと現代のヴィパッサナー瞑想法」の中では次のように書かれています。

(質問6:答え) …(略)… 禅定の近くで生じる近行定ぐらい得られれば五蓋の煩悩などが除かれているので、その近行定によって心清浄が満たされヴィパッサナー瞑想を実践でき、その様に瞑想することによって阿羅漢果まで達することができ、その様に達した人が多くいると清浄道論などにはっきりと述べられています。
仏説であるパーリ経典などにも近行定ぐらいを得られる威儀の部によるヴィパッサナー瞑想法によって阿羅漢果まで達することができると大念住経などにはっきりと説かれています。…(略)…

 つまり、禅定に達するまでの必要はないが、それに近い集中力(近行定)は必要であるということです。(なお、五蓋とは「欲・怒り・眠気・混乱状態と後悔・疑い」です。)

マインドフルネス瞑想でも基本的な考え方は同じだと思われます。
例えば、「心の中の思いと共に座る」エクササイズでは「かなりの集中力」が必要とされ、「あるがままの意識と共に座るトレーニング」では「かなり練習を積んだうえで得られる落ち着きと注意集中力」が必要とされています。
「気づき」の力を養うことにより、第一禅定に近い集中力がもたらされということはありますし、「ボディスキャン瞑想」と「マインドフルネス・ヨガ」を「静座瞑想」に先立って練習することには、注意集中力を育むという狙いもあるものと考えられます。
ただ、MBSRの参加者にはモチベーションの高い方が多いことを考えると、マインドフルネス瞑想を継続して練習してもらうためには更なる工夫も必要になると思います。

2013年2月10日日曜日

マハーシ瞑想法が、アーナーパーナで指導しない理由


 マハーシ大長老がヴィパッサナー瞑想に関する質問に答えたQ&A集がウ・コーサッラ西澤師によって訳出され、日本テーラワーダ仏教協会HPにて、PDF本として配布されています。その中に、マハーシ瞑想法では、アーナーパーナ(出息、入息)で指導しない理由が紹介されています。


質問25  
   マハーシ瞑想法では、なぜアーナーパーナ(出息、入息)で指導しないのですか?


答え  
 私はアーナーパーナ(出息、入息)で瞑想することは風の要素、色とそれを念じている心、名によってヴィパッサナーの智慧が生じると理解しています。しかし、清浄道論によると身随観の部十四種をサマタ瞑想法とヴィパッサナー瞑想法を分けて、アーナーパーナ(出息、入息)を以下の様にサマタ瞑想法として分類しています。
…(略)…
今述べた清浄道論においてアーナーパーナ(出息、入息)をサマタ瞑想法とはっきりと分けています。もし私たちがアーナーパーナ(出息、入息)を指導したら、それを好まない人たちが上記の清浄道論を基に私たちが指導しているのをサマタ瞑想だ、ヴィパッサナー瞑想ではないと非難するのは間違いありません。私たちも清浄道論を否定しヴィパッサナー瞑想だということはできません。ですから私たちはアーナーパーナ(出息、入息)をヴィパッサナー瞑想として指導していません。
…(略)…
もう一つはアーナーパーナ(出息、入息)で瞑想するとき鼻の先など一ヶ所に集中しなければなりません。内に入っていった息を追って瞑想してはいけないと無碍解道論と清浄道論にはっきりと述べられています。それらは著者の意図として近行定、安止定を想定したものです。ヴィパッサナーの智慧が生まれるようにするためには一つの場所だけを念じなければならないという制限はありません。しかし、アーナーパーナ(出息、入息)をしているときに別のところに感覚などが生じてきたり、考えなどが生じたときにそれらを念じるよう指導したならば無碍解道論と清浄道論に反する、間違っていると非難されるのは確実です。ですから私たちはアーナーパーナ(出息、入息)でヴィパッサナー瞑想を指導せずにいます。これぐらいでなぜアーナーパーナ(出息、入息)を指導しないのかという質問の答えになったでしょう。

2013年2月9日土曜日

マインドフルネス瞑想(MBSRの「静座瞑想」)の性格


マインドフルネス」はパーリ語の「サティ」を英訳した言葉ですが、そもそもパーリ語というのはテーラワーダ仏教経典で使われている言葉です。
パーリ経典のうち、瞑想法に関する経典は 「マハーサティパッターナ・スッタ」と呼吸に焦点をあてた、「アーナーパーナサティ・スッタ」です。
これらについては、日本語訳を掲載してくださっているブログがありますので、感謝して紹介します。(多摩丘陵林住記 大念住経(大念処教)http://blog.goo.ne.jp/hhynk/e/5dfd915e6ed70b389d597c53a110d757
「マハーサティパッターナ・スッタ」(大念住経)は目次だけ掲示します。

一、身に関する瞑想      
 1 出息、入息の部
 2 行住坐臥の部
 3 正しい意識の部
 4 不浄観察の部
   5 要素の観察の部
 6 九段階の死体の部 
二、受(感覚)に関する瞑想
三、心に関する瞑想   
四、法に関する瞑想     
    1 五蓋(五つの障害)の部  (貪欲、瞋恚、こん眠、掉悔、疑)
  2 五蘊(五つのの固執される集まり)の部 (色、受、想、行、識)       
  3 六つの内・外処の部 (眼耳鼻舌身意、色声香味触法) 
  4 悟りの七条件の部(念、択法、精進、喜、軽安、定、捨)  
  5 真理の部     
   a. 苦の真理の部 
        b. 苦の因の真理の部
        c. 苦の滅の真理の部  
        d. 道の真理の部   

 アーナーパーナサティ・スッタについては、「呼吸による癒し」(L.ローゼンバーグ著
井上ウィマラ訳 P12)から経文の訳を引用します。(多摩丘陵林住記 出入息念経1  http://blog.goo.ne.jp/hhynk/e/d77fb31bec1a9eddd51cf4ea67002a30

1 身体に関する呼吸の気づき
(1)長く息を吸っている時には『長く息を吸う』と知り、長く息を吐いている時には 『長く息を吐く」と知る。
(2)短く息を吸っている時には『短く息を吸う』と知り、短く息を吐いている時には『短く息を吐く」と知る。
(3)『全身を感じながら息を吸おう。全身を感じながら息を吐こう』と訓練する。
(4)『全身を静めながら息を吸おう。全身を静めながら息を吐こう』と訓練する。

2 感受に関する呼吸の気づき
(5)『喜悦を感じながら息を吸おう。喜悦を感じながら息を吐こう』と訓練する
(6)『楽を感じながら息を吸おう。楽を感じながら息を吐こう』と訓練する。
(7)『心のプロセスを感じながら息を吸おう。心のプロセスを感じながら息を吐こう』と訓練する。
(8)『心のプロセスを静めながら息を吸おう。心のプロセスを静めながら息を吐こう』と訓練する。

3 心に関する呼吸の気づき
(9)『心を感じながら息を吸おう。心を感じながら息を吐こう』と訓練する。
10)『心を喜ばせながら息を吸おう。心を喜ばせながら息を吐こう』と訓練する。
11)『心を安定させながら息を吸おう。心を安定させながら息を吐こう』と訓練する。
12)『心を解き放ちながら息を吸おう。心を解き放ちながら息を吐こう』と訓練する。

4 法に関する呼吸の気づき 
13)『無常であることに意識を集中させながら息を吸おう。無常であることに意識を集中させながら息を吐こう』と訓練する。
14)『色あせていくことに意識を集中させながら息を吸おう。色あせていくことに意識を集中させながら息を吐こう』と訓練する。
15)『消滅に意識を集中させながら息を吸おう。消滅に意識を集中させながら息を吐こう』と訓練する。
16)『手放すことに意識を集中させながら息を吸おう。手放すことに意識を集中させながら息を吐こう』と訓練する。

ジョン・カバット‐ジン博士は、「呼吸による癒し」の序文で著者L.ローゼンバーグ氏を同じ道を歩む友、すなわち「ダルマ・ブラザーズ」であると紹介しています。
「マインドフルネス ストレス逓減法」には「呼吸により癒し」と共通している考えが多く見られ、「マインドフルネス ストレス逓減法」では記述されていない、テーラワーダ仏教的文脈を理解するのに役立つものと思われます。

項目を対比すると次のようになっています。
アーナーパーナサティ・スッタ
静座瞑想のエクササイズ(MBSR)
一 身体に関する呼吸の気づき
呼吸と共に座る
 『全身を感じながら息を吸おう。
全身を感じながら息を吐こう』
 呼吸と体の一体感を味わいながら座る
二 感受に関する呼吸の気づき
(音と共に座る)
三 心に関する呼吸の気づき
心の中の思いと共に座る
四 法に関する呼吸の気づき
あるがままの意識と共に座る

「呼吸による癒し」では、アーナーパーナサティの簡略な修行法として、アーチャン・ブッダダーサの「凝縮された修行法」を紹介したうえで、「伝統的な方法」と「マハーシ方式」を踏まえ、「無常を観察する前に禅定を深めなければならないという説にはこだわらないが、瞑想者にある程度の集中力を培う時間を与え、集中力が得られてからヴィパッサナーを導入します。この二つの修業は互いに補い合い強めあいながら共に成長していきます。静寂な心においては洞察も鋭くなり、洞察によりさらに心は静寂になります。それらは交互にリズムを取りながら一緒に成長していくのです。(「呼吸による癒し」P221)」と述べています。

この考え方は、マインドフルネス ストレス逓減法の「静座瞑想」にも通底しているものと考えられます。
・「心の中の思いと共に座る」エクササイズにはかなりの集中力が必要ですから、静座瞑想の最初の段階で2,3分間ぐらいだけ行ってください。( P113 )
・「あるがままの意識と共に座る」トレーニングはかなり練習を積んだうえで得られる落着きと注意集中力が必要です。( P108 )

 以上から、マインドフルネス ストレス逓減法の「静座瞑想」はアーナパーナサティ・スッタに則り、呼吸に対する気づきにより、集中力を高めながらヴィパッサナーを行う瞑想法であるといえるでしょう。

2013年2月3日日曜日

うつ病とストレス


本来、生命の危機にかかわるような「闘うか、逃げるか」という選択を迫られ、大きなストレスが発生すると、扁桃体からの緊急信号により
副腎からコルチゾール(ストレスホルモン)が放出される
副腎からノルアドレナリンが放出される         
③セロトニンの放出が抑制される。 といった反応が起こります。

こうした反応は心理的なストレスの場合も同様に発生します。こうしたストレスが短時間で回避できれば良いのですが、現代社会のように精神的なストレスが長時間にわたって継続するようになると、
①コルチゾールの過剰により、脳内で血の巡りが悪くなりLDPFCや海馬の神経細胞が萎縮して、扁桃体がコントロールできなくなる。
②過剰放出からノルアドレナリンが不足し、意欲なくなり無気力になる。
セロトニンの抑制により、不安感や焦燥感が抑えられなくなる。
といった悪影響が広がってきます。
その結果、体調などその他の原因と相まって、うつ病が発症すると考えられます。

うつ病と脳

近年、検査機器の進歩により、うつ病と脳の関係が明らかになってきています。


1  神経伝達物質の乱れ
  脳は神経細胞の集まりですが、うつ病の場合は、その神経細胞間の情報伝達物質である、セロトニンやノルアドレナリンが減少している状態が認められます。
現在主流の抗うつ薬である「SSRI」と「SNRI」は、セロトニンやノルアドレナリンの伝達効率を上げる働きを目的としています。

2  扁桃体や海馬における脳細胞の萎縮
  情動を司る扁桃体と記憶を司る海馬の細胞の死滅は、うつ病の症状で見られる、感情の抑制が効かなくなることや、記憶力が低下して物覚えが悪くなる原因であると考えられます。

3  DLPFC(前頭前皮質背外側部)などの活動異常
 理性を司る前頭前野では、扁桃体の活動をコントロールするDLPFCの活動が低下しています。














NHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」から

マインドフルヨガ

寝て行うマインドフルヨガ



立って行うマインドフルヨガ
21はJ.カバットジン博士のワークショップで行われた、ウォリアーⅡのポーズにしてみました。


うつ病の診断基準(DSM-IV-TR)




  • A) 以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも1つは、(1)抑うつ気分または(2)興味または喜びの喪失である。
    注:明らかに、一般身体疾患、または気分に一致しない妄想または幻覚による症状は含まない。
    • (1) その人自身の言明(例:悲しみまたは、空虚感を感じる)か、他者の観察(例:涙を流しているように見える)によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。
      注:小児や青年ではいらだたしい気分もありうる。
    • (2) ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味、喜びの著しい減退(その人の言明、または他者の観察によって示される)。
    • (3) 食事療法をしていないのに、著しい体重減少、あるいは体重増加 (例:1カ月で体重の5%以上の変化)、またはほとんど毎日の、食欲の減退または増加。
      注:小児の場合、期待される体重増加が見られないことも考慮せよ。
    • (4) ほとんど毎日の不眠または睡眠過多。
    • (5) ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止(他者によって観察可能で、ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主観的感覚ではないもの)。
    • (6) ほとんど毎日の易疲労性、または気力の減退。
    • (7) ほとんど毎日の無価値観、または過剰であるか不適切な罪責感(妄想的であることもある。単に自分をとがめたり、病気になったことに対する罪の意識ではない)。
    • (8) 思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日認められる(その人自身の言明による、または、他者によって観察される)。
    • (9) 死についての反復思考(死の恐怖だけではない)、特別な計画はないが反復的な自殺念慮、自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画。
  • B) 症状は混合性エピソードの基準を満たさない。
  • C) 症状は、臨床的に著しい苦痛、または、社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
  • D) 症状は、物質(例:乱用薬物、投薬)の直接的な生理学的作用、または一般身体疾患(例:甲状腺機能低下症)によるものではない。
  • E) 症状は死別反応ではうまく説明されない。すなわち、愛する者を失った後、症状が2カ月を超えて続くか、または、著明な機能不全、無価値観への病的なとらわれ、自殺念慮、精神病性の症状、精神運動抑止があることで特徴づけられる。
American Psychiatric Association:Diagnostic and statistical manual of mental disorders 4th edition,Text Revision,2000
(高橋三郎、大野裕、染矢俊幸(訳):DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引,医学書院,2002)

3分間呼吸法


1 背筋を伸ばし、深呼吸をします。

2 気づき
心に浮かんでいるものに注意を向けます。どんな思考があるでしょうか。できるだけその思考をただの心の中の出来事としてとらえて・・・、思考に気づいたら、次にその辺りにある感情に気づきます。


3 集中する


呼吸の動きに注意を集中させて気づきを集めます。呼吸で上がったり、下がったりする下腹部の動きへ注意を向けます。しっかりとその瞬間とつながるための道具として呼吸を用いながら落ち着いていきます。



4 広げる
呼吸に気づきを向けながら、全身の感覚をも含めていきます。全身で呼吸しているかのように呼吸をたどりましょう。


3分間呼吸法はMBSRでは、ただ3分間呼吸するのですが、MBCTでは「呼吸空間法」として、意識の自動操縦状態から抜け出す手段とされています。
ただ、慣れないうちは、1 のように、一息入れるほうが効果的でしょう。

歩く瞑想

1 手を前か後ろで組み合わせ、視線をやさしくまっすぐ前に向けます。

2 両足と床の接触面に気づきを向け、足の裏と床の接触による身体感覚を感じましょう。

3 体重を左足に移し、息を吸いながら右足のかかとを床からゆっくりと上げ、注意深く半歩前

に進めましょう。小さく自然な歩幅がベストです。
4 息を吐きながら右足のかかとから床に着け、体重が足先にかかっていくのを感じます。
5 同様にして左足を半歩進めます。
    自然な呼吸に合わせ、呼吸をペースメーカーにして歩いてみましょう。
6 端まで来たら,少しの間立ち止まって、「立つ」ということを意識しましょう。
  それからゆっくり体の向きを変えながら、そのときの複雑な動きに気づいて、それを認
めて、そして歩き続けます。




歩く瞑想では、足の裏の感覚に注意を置きましょう。呼吸とシンクロさせるのも良いでしょう。
マハーシシステムでは動きを非常に細かくラべリングしますが、J.カバットジン博士の指導は、
ただゆっくりと歩けばいいんだよというものでした。

2013年2月2日土曜日

ボディスキャン瞑想


1 楽な姿勢で、目をそっと閉じましょう。少し時間をとり、呼吸の動きや身体の感覚を感じましょう。 身体の特定部分で緊張や強い感覚に気づいたら、その部分に息を吸い込み、息を吐くときにその感覚を手放したり、開放したりする感覚を持ちましょう。

2 下腹部の感覚に気づきを運びましょう。息を吸ったり吐いたりするたびに、下腹部が膨らんだり、縮んだりするときの感覚を感じましょう。

3 腹部の感覚を感じとれたら、気づきの焦点を左脚を通って、つま先へ下してゆき、親指から順に左足の指先に注意を動かしましょう。息を吸う際に指先から吸い込むようにして「気づき」を向けましょう。指先の感触やうずき、温かさに気づくかもかもしれませんし、何も感じないかもしれません。そうした感覚から息を吐き出し、息を吐くとともにゆるみ、オープンになりましょう。



4 今度は、息を吸うときに息が肺に入り、腹部を通過して左脚をとおり、左足のつま先から出ていくのを感じたり、イメージしたりしましょう。それから息を吐くときは息がそれらのすべての通り道を上がってきて、足先から、腹部を通過して鼻から出ていくのを感じたり、イメージしたりしましょう。息をつま先まで通し、つま先から戻していくことを数回続けましょう。[中へと呼吸する]

5 息を吐いて、つま先の力を抜いて気づきを左足のつま先に置き、2~3回呼吸をしましょう。背景では呼吸に気づき、前景では感覚を探り、感覚とともに呼吸しましょう。[共に呼吸する] 気づきを足の裏、足の甲、かかと足首に動かしましょう。

6 少し深い呼吸をして、左足全体に注意を向け、息を吐くときに、左足を完全に解き放しましょう。

次に、気づきの焦点ふくらはぎ、向こうずねに移しましょう。

7 気づきの焦点を 膝頭、膝の外側、膝の内側、膝の裏側に移しましょう。ふともも、左脚の付け根に気づきの焦点を移しましょう。

8 気づきの焦点を右脚を通って、つま先へ下してゆき、親指から順に右足の指先に注意を動かしましょう。



9   次に、息を吸うときに息が肺に入り、腹部を通過して右脚をとおり、右足のつま先から出ていくのを感じたり、イメージしたりしましょう。それから息を吐くときは息がそれらのすべての通り道を上がってきて、足先から、腹部を通過して鼻から出ていくのを感じたり、イメージしたりしましょう。息をつま先まで通し、つま先から戻していくことを数回続けましょう。


10 息を吐いて、つま先の力を抜いて気づきを右足のつま先に置き、2~3回呼吸をしましょう。背景では呼吸に気づき、前景では感覚を探り、感覚とともに呼吸しましょう。[共に呼吸する]  気づきを足の裏、足の甲、かかと、足首に動かしましょう。

11 少し深い呼吸をして、左足全体に注意を向け、息を吐くときに、左足を完全に解き放しましょう。次に、気づきの焦点ふくらはぎ、向こうずねに移しましょう。


12 気づきの焦点を 膝頭、膝の外側、膝の内側、膝の裏側に移しましょう。ふともも、右脚の付け根に気づきの焦点を移しましょう。

13 気づきの焦点をお尻、骨盤、背中の下部、背中の上半分、お腹、胸、肩に気づきを置いて   呼吸しましょう。
14  両手は一緒に行います。両手のひら、手首、腕の下部、ひじ、上腕、肩、首、あご、唇、歯、歯茎、舌、唇、ほほ、目、こめかみ、耳、額、顔全体、頭の下部、頭の上部、頭頂部。 

15  このあと、数分時間をとって、全体としての身体の感覚と身体から自由に出入りして流れて いる呼吸の感覚に気づきを向けましょう。

ボディスキャン瞑想を終わりましょう。


https://dl.dropbox.com/u/106591646/bodyscan%2030min.MP3 (音声ファイルへのリンクです)

静座瞑想

〇 マインドフルネス瞑想では、自分の呼吸に注意を集中し、そのあいだに起こることを観察します。呼吸に意識を集中するということは、呼吸をコントロールしたり、呼吸について考えたりすることではなく、呼吸に意識を置き、呼吸にともなって生じてくる感覚を感じるということです 。

〇座る姿勢 
1 頭と首と背筋を一直線にして、垂直に坐りましょう。 座るのは椅子でも床でもかまいません。 床に座る場合は、どちらか一方の足のかかとを会陰部につけて、折り曲げたもう一方の足 をその手前に持ってきましょう。(ビルマ人のあぐら)可能なら「半跏趺坐」や「結跏趺坐」でも良いでしょう。
クッションの高さを調整して、膝を床につけ、楽な姿勢でしっかりと安定感が得られようにしましょう。 椅子を使うのなら、背骨で身体を支えるように、椅子の背から離れてすわりましょう。

2 手は、お腹の前に左手の手のひらを上にして軽く置き、その上に右手の甲を重ねましょう。
両膝の上に両手のひらを上に向け、軽く乗せる形でも良いでしょう。
3 目は静かに閉じましょう。「半眼」でも良いでしょう。

   


〇 呼吸と共に座る
息を吸うと、鼻先から空気が入ってきて、鼻孔を通過する空気の流れが鼻孔の縁に触れる感覚とお腹が膨らむ感覚が感じられます。息を吐くと、お腹が縮む感覚と空気が鼻孔を通り過ぎ、鼻先から出て行く感覚が感じられます。
1 呼吸の流れへに向かって意識を集中します。
穏やかに、身体の感覚の変化に「気づき」を向け、息の始まりと終わり、息と息との小休止にも注意を向けましょう。
2 遅かれ早かれ、呼吸の感覚から注意が離れ、さまざまな思考、計画、空想など、心はあちこちさまよっていくでしょう。これはまったくOKなのです。注意がもはや呼吸に向いていないと気づいたら、心がどこに行ってしまっていたのかを簡単に確認し、(「考えている」など)、それから身体感覚の変化に注意を穏やかに戻しましょう。
3  呼吸に伴う身体感覚に注意を向けるための補助的な手段として、呼吸にあわせて数を1から10まで数える方法や「ラべリング」(「膨らむ」、「縮む」)などを試してみましょう。     

                      
〇呼吸と体の一体感を味わいながら坐る
1 集中力を高めるため、呼吸の流れを観察する範囲を狭め、鼻孔を出入りする空気が鼻孔の縁に触れる感覚を観察の対象としましょう。呼吸のたびに空気が鼻孔の縁に触れることを意識します。観察する一点に心を留め、そこから意識を逸らさないようにしましょう。
 (2012年11月の総持寺でのワークショップにおいて、J.カバットジン博士は鼻先に意識を置くようにコメントしていました。)
2  心はくり返し、身体感覚からさまよい離れますが、それは自然なことで、けっして間違いや失敗ではありません。気づきが身体感覚から離れてしまったことに気づいたら、目が覚めた自分をほめてあげても良いでしょう。
3 呼吸への気づきがほどよく安定したと感じたら気づきの領域を鼻孔の縁から拡大して、座って呼吸している身体全体のとしての感覚にも注意を向けるようにしましょう。座っている自分の身体と呼吸は一体であるという感覚を意識し、呼吸と体の一体感を味わいましょう。

〇音とともに坐る
1 気づきの焦点を、身体感覚から聴くことへと移します。注意を耳へと向け、気づきが広がるのにまかせます。そうすると、音が起こるとそれがどこで起こっていようが、すぐに気づくようになります。

2 音を探したり、特定の音を聞こうとしたりする必要はありません。そのかわり、どんな方向からの音にもすぐに気づけるように、できるだけ心をオープンにします。あなたの周囲のすべての音の空間にオープンでいます。はっきりした音、よりわずかな音に気づき、音と音との間にある空間に気づき、静けさに気づきます。
3 できるだけ、感覚としての音に気づいてください。あなたが音について考えていたら、その音の意味やそこから推測されることではなく、感覚の質(音の高さ、音色、音量、音の長さなど)にできるだけ気づきを戻します。
4 その瞬間の音に焦点をあてていないと気づいたときには、心がどこに動いたのか穏やかに認め、瞬間・瞬間に生じ、消えていく音に気づきを戻します。

(これからのエクササイズにはかなりの集中力が必要です。最初の段階では、しばらく念じ、感情や思考の力を抑え、ラべリングなどをしたら再び呼吸の感覚に戻りましょう。


〇特定の身体感覚とともに坐る
練習における基本的方針は瞬間ごとの体験において最も優勢なものにマインドフルに気づくようになることです。セッションが長くなると、背中、膝など身体のどこかの部位で特に特に強い感覚が生じるかもしれません。気づきが呼吸から身体的不快感や感情に関連する特定の身体感覚へと離れて行っていることに気づいたときには、もっとも強い感覚のある身体部位へ意図的に気づきの焦点を移動させ、その身体感覚にマインドフルに気づくようになることが第1段階です。ボディスキャンで練習したように息を吸いながらその身体部位へ「息を吸い込み」、息を吐きながらそこから「息を抜く」ことにより、そこへやさしく友好的な気づきを向けてみましょう。


〇心の中の思いとともにともに坐る
1  呼吸に対する気づきが安定したら、思考に意識を向けましょう。
2 思考にはまり込んでしまうと、自己と思考を分けるのが難しくなります。思考は心をさらっていってしまい、瞬時に、私たちは遠くに運ばれてしまいます。思考を追わなければいけないと思うことなく、思考を心の中の出来事として感じ取るようにしましょう。目を閉じて、映画館に座ってからっぽのスクリーンを見ていると想像するのも良いでしょう。そしてただ思考がわき起こってくるのを待ちましょう。


 
〇あるがままの意識とともに坐る
何もせずに、何にも注意せずに、ただ坐りましょう。何かに執着したり、何かをもとめたりしないようにしましょう。意識を完全に開放し、意識の領域に入ってきたもの(過去の記憶、感情、意志など)はすべて受け入れ、去っていくものは去るにまかせて、それをじっと観察しましょう。
J.カバットジン博士は意識そのものを意識すると表現していました。)